夜の不定期連続ドラマ 「姫反」 12
第十二夜 「グラフティー」
「なぁ、使ってない歯ブラシとかない?」
「ちょい待って。あんま使ってないけどコレ使え。」
真の友情とはこういうものだ。
友人の家の、風呂場の排水口に溜まったヘドロを取ってやる。
木村祐一だったら
「ありえへんっ!」
って言うだろう。
何でこういうことになったのか?
俺んちが母子家庭で、家事が得意だと言ったからなのか。
エリカ曰く、
「前住んでたのがフィリピン人留学生だかで、正体はわからん。」
のだそうだ。
だから何故俺が取る?
お前とは出会って1ヶ月も経っとらんぞ。
「え~、だって何か怖いじゃん?」
俺の健康面は考慮されないのか。
「よし、取れたぞ。うわっ、汚ねぇ~。」
「なんだべな。フィリピン人の垢か?」
「ちょっと、ビニール袋とか無い?」
「はいはい、只今!」
キッチンに向かうエリカ。
まるで従順なメイドのようだ。
それはうっすらとピンク色で、ねっとりと髪の毛が纏わり付いていた。
何かの粘液のようにも見えて、見るからに不潔な塊だった。
「はい、しゅう~りょう~!」
「サンキュウ♪」
満面の笑みを浮かべるエリカ。
嗚呼、俺はこの笑顔の為にやったんだな。
・・・ちがうちがう。
だまされるな、俺。
このままでは、事あるごとに、エリカんちの雑務を担当する羽目になるぞ。
結論から言うと、俺はコーヒー一本でいろんなことに付き合った。
エリカのエロDVDを仕入れに、城東まで乗せてったり。
卒業する先輩からラックを貰いに乗せてったり。
バイトの面接の為に、サンクスにも乗せてった。
初代のミラは税金が安いから4ナンバー。
ドアミラーは手動式。
二代目のミラは正月特価十万円。
ボタン一つで四輪駆動。
なんたって軽だから、車内は狭い。
俺とエリカ、アラレちゃんが乗り込んで、鍋の材料を積み込んだら、
ユニバースの駐車場の坂道に苦戦する始末。
でも、車種なんかどうだって良かった。
俺が運転し、エリカがタバコに火をつけることに意味があった。
俺のミラの助手席は、八重歯のものではなく、
エリカのものだったのかも知れん。
「ゆうぅ~ぐれ~♪なぞぉ~た~♪」
「ふたぁ~つの~♪ながぁいかげ~♪」
ベロでうずくまるぶどうあめ。
さぁ今日は何処へ行こうか。
ボリュームは14のゴーイングアンダーグラウンド。
続きます。
2008/01/30 | 創作
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