夜の不定期連続ドラマ　「姫反」　６

第六夜　「クチバシニチェリー」
颯爽とバイクで登場。
足元は革靴で、
ジャズをこよなく愛し、
夜はバーテンへ変身。
銜えタバコで、
冬はお洒落なマフラーをたなびかし、
実は専攻考古学。
見た目は子供（身長が）、頭脳は大人（言動が）。
弘大弓道部のファッションリーダー、“腰履き”！
・・・探偵にでもなる気ですか？
実際ファッションセンスはあるし、趣味なんかはかっこいい。
でもどうしても三枚目なんだなぁ。
大体、入部の理由が、
「友達を作りたかったから。」
なんで弓道なんでしょ？
タイ人コックと同じく寮生だった彼も、かなり忙しい生活だったようだ。
寮の仕事に、アルバイト。
肝心の勉学にも勤しんで、公務員試験対策とまできたもんだ。
ゼミに所属してからはかなり部活から遠退いた。
それでも時間を作って自主練しているところを、俺は何回も見ている。
根は真面目なんだよな。
現実主義者。
クールぶっているけどどっちかて言うとドライ。
俺がそんな風に生きようと思うと、しんどいと思っちゃう。
でも“腰履き”はそれを貫いた。
生き様を見ろってことなのか。
そういう美学が根底に流れている。
「リアルな話、今回も俺は介添えだと思うんだけど・・・。」
初心者だったし、何より早気だった。
弓道生活の後半は、名介添えの名を欲しい侭にした。
いちスポーツマンとしてはかっこ悪いこと？
いいや、彼の献身で多くの者が輝いた。
誰だって試合で活躍したいに決まってる。
どんな理由で入部しようと、必ず芽生える欲望だ。
諦め。
卑屈。
自己の正当化。
「どうせ俺は・・・。」
とか言ったって、試合に出れたらものすごく嬉しい。
日々の練習はその為にある。
だからどうしても強化練に出れなければ、空き時間に２０射しておく。
ノートに書き込んで、さりげなくアピールのコメントをする。
現実を見て、介添えを頑張る。
「リアルな話・・・、」
はもう、ひとつの彼のギャグみたいなモノだったけど。
みんな知ってるんだよ？
お前の頑張りを。
そしてお前の、介添えとしての心強さを。
かっこよさは見た目じゃない。
バイクやジャズやカクテルじゃない。
リアルな生き様。
現実を見て銀行員。
スーツを脱げば、ハードボイルド。
続きます。