夜の不定期連続ドラマ　「姫反」　１４

第十四夜　「便所だけに、ね？」
サンクスでバイトしていたエリカの為に、弘大弓道部員はいろいろと散財した。
ボジョレーヌーボー。
それから恵方巻き。
俺が確実に覚えているのはコレだけだが、もっといろんなモノをみんな
予約して買っていた。
バイトにもノルマがあるらしい。
弓道部員、友人を総動員して予約を捌いていたらしい。
いつだったか、俺も恵方巻きを予約することになった。
大体、東北の習慣に、恵方巻きはない。
関西の習慣をコンビニがイベントとして展開し、それが青森まで
やってきたんだろう。
予約した恵方巻きを回収すると、俺とエリカは腰履きの家に向かった。
腰履きはその頃寮を出て、友人とルームシェアをしていた。
やることなすことカッコイイ。
ルームシェアか。
夜の秘め事はどうするんだ。
そんな下品な疑問しか浮かばない。
部屋はスタイリッシュな感じで、生活感が感じられなかった。
物色をそこそこに、早速恵方巻きを頬張ることにする。
その年の恵方がひと目でわかるコンパスを出す。
ところで恵方巻きは、食べだしたら一言も言葉を発してはならない。
幸福が逃げるとか、そんなことなんだろうか。
俺はコンパスを取り出して、その指し示す方向を見た。
なんと、それは腰履き家の便所を指し示していた。
なんということだ。
よりによって他人ん家の便所を見ながら太巻きを頬張ることになるとは・・・。
しかも無言で・・・。
俺らはその運命的な恵方に、爆笑しながら頬張り始めた。
なかなか太いので呼吸も鼻呼吸となる。
俺もエリカも、
「ムフー、ムフー。」
言いながら完食した。
その後のことはよく覚えていない。
コーヒーをご馳走になって、タバコを吸ったぐらいだろう。
腰履きの家を出ると、雪が降っていた。
俺の紫のミラが、真っ白になっていた。
腰履きに見送られながら俺とエリカは家路についた。
恵方巻きを食ったお陰だろうか？
なんとなくその後は運がついているみたいだった。
続きます。