夜の不定期連続ドラマ　「姫反」　１５

第十五夜　「便所の戦慄」
弘大弓道部男子に、放尿中の安息はない。
初めて道場に来たとき、高校の道場とのあまりの違いに驚かされた。
まず広い。
巻き藁室が別個にある。
安土の土がこんもりしてる。
そして何より、トイレを完備している。
うちの高校の道場には、トイレがない。
わざわざ体育館の方まで歩いていって、他の部活の部室が集まっている
建物内にある、薄暗い便所を使用しなければならない。
しかもそこはメッチャ臭い。
そして電気がつかない。
たまに紙もない。
そんな環境にあったから、トイレ完備はもの凄く好印象だった。
ある時、ふと、便所で用を足して居る時に気がついた。
男子便所の左はすぐ窓がある。
その窓と男子便所の間に、腕が入る位の隙間があることに。
その隙間から腕を入れると、内側のドアノブに手が届くということに。
そして、ドアの鍵を開錠することが出来るということに。
以来俺は、飲み会の度、誰かが入っている時を見計らって開錠しまくった。
放尿中は誰もが無防備となる。
しかも、酔っ払っている為、放尿時間が長い。
丁度放尿の中盤に徐に開錠し、中の人物の背後を取る。
後は絡み放題だ。
自分の膀胱が破裂しそうになった時も便利だ。
背後から急き立てる。
人の尿意など構っていられるものか。
俺の蛮行に対し、逆に俺の放尿中を狙ってくる輩も現れた。
しかし俺は自分の放尿を邪魔する者に容赦しない。
気配を察知すると、侵入してきた左腕を捕らえ、締め上げる。
「イデデデデッ！」
「フハハハハァ、この不届き者がぁ！」
便所の藻屑となるがいい。
特にオチとかは無いんだ。
今日伝えたかったのは、俺が最低な奴だということさ。
続きます。