【宮城谷昌光 奇貨居くべし】人は自分の計算のなかに収まる人を心から尊敬しない

あえていえば、人は自分の計算のなかに収まる人を心から尊敬しない。
人は敵対者を恐れるよりも、助言者に用心しなければならぬ。


慈光苑が斉軍に襲われるのは時間の問題となった。
苑の主、伯紲は新しい斉王の伯父である。
王位への欲望を捨て斉を去り、戦災遺児や未亡人を文字通り慈しむための苑を運営してきた
伯紲すらも、その座を奪うのではないかと猜疑心が強い斉王は考えた。
殺さねば安らがぬのであろう。

呂不韋は慈光苑に残り、防衛することを決めた。
「われわれが死なぬとすれば、ひとりでも多くの者を助けよう。それがわれわれの正義だ」
義侠心が芽生えていた。

従者である雉は主人の身を案じて苑を出ることを勧めるが、
その言に乗って逃げだせば、後々「主人はその程度の人であったか」と軽蔑の念を浮かばれかねない。

孫氏の学び、駑馬である自分は、目の前のことを精一杯やることでしか千里に到達できないことを知っている。
その呂不韋の身の立て方は、逃げずに慈光苑を守ることである。
たとえ呂不韋をよく知り、尊敬している雉に対しても、気宇の巨きさを示さなければならなかったのだろう。

本当に偉大で、尊敬に値する人物は、いつも我々の予想を超える。
予想を超えて、素晴らしい事績を成し遂げる。
我々も駑馬であるが、他人の計算に収まるようなつまらぬものにならぬよう努めるべきである。


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