【宮城谷昌光 管仲】人を動かせるということは才度が大きいということである

管仲ヨコ

人を動かせるということは才度が大きいということである。


鮑叔が自分が望む結婚を認めさせるため、計策を用いて父である鮑敬叔を納得させた。

鮑敬叔は君命を拝して衛に戻った鮑叔に対し、
婚礼については全て自分が決めると言った。
鮑敬叔としては鮑叔が簡単に退くとは思っていなかったので、
婚礼について一切を父に任せるといった鮑叔の態度に機嫌を良くした。

しかし鮑叔が加冠を終えた後、鮑敬叔は鮑叔の結婚相手を、
衛の君主・僖公が決めたことを聞かされる。
鮑叔が他国で結婚し、父に反対されても妻としたい女性・檽叔は
衛で権勢をふるう高氏の養女となり、その後正式に嫁入することとなった。
僖公も高氏も鄭の太子忽からの圧力により、鮑叔の意のままに動くこととなった。

鮑叔はそれだけ太子忽からのおぼえが良かったということになる。
檽叔がもともと太子忽から鮑叔へ下賜された女であることも関係しており、
その女を正式に妻とすることが太子忽への報恩になるという意味もある。
とはいえ、鮑叔が一国の太子を動かし、自国の君主や貴族まで動かし、
結婚を意のままにしたことは事実で、鮑敬叔はその事実に感心したのであった。

鮑叔は父と対立せず、角を立てず、それでいて思うような結果を導いている。
その為に、多くの貴人を動かしているのである。

才度とは、才知と度量のことである。
才度が大きくない我々は、貴人を動かすことはできないが、
常に誠意を持って接していれば、友人知人といった周囲の人の力を借りることはできよう。
畢竟人は独りでは立っていられぬものである。

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