【宮城谷昌光　奇貨居くべし】人を殺す矛と、人を衛る盾とが、同じところでつくられる。

邯鄲の製鉄工場を訪れた呂不韋と鮮乙の言。

この時代、鉄器の主役は武器であり、
戦乱の世ではどちらも大量に生産され、大量に消費されている。

矛も盾も元はおなじ鉄塊である。
毒と薬もまたおなじであろう。

人も同じではあるまいか。
無垢に生まれた来た赤子は、聖人にもなれば悪人にも成り得る。
生まれた環境や、周りの影響で白くも黒くも染まり得る。

これは教育や躾だけの話ではない。
自分が黒く染まってきたと思えば、思い出して欲しい。
自分には白く染まる可能性もまた、同じ程度にあったことを。

矛や盾は、また鉄塊に戻ることができる。
戻すか戻さぬかは、為すか為さぬかだけである。

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