【宮城谷昌光 奇貨居くべし】人のなかにいればこそ、孤独は深まる

人のなかにいればこそ、孤独は深まる。
しかしながら、その孤独さをなぐさめてくれるのも、人なのである。


生母が居ない呂不韋は、家中軽くあつかわれ、店員とかわらず働かされていた。
義母・東姚が呂不韋に向ける眼差しは底冷えのようなものがあり、
東姚の実子である兄や弟とも、呂不韋とは隔たりがあった。
裕福な商人の子であっても、その毎日は不遇に満ちていた。

十五となり、父の命により山へと旅立った。
この旅立ちが呂不韋の人生を変える旅となった。
父から付けられた従者が鮮乙であった。

店の中での鮮乙は寡黙な男であり、他の店員は「情が薄い男」、
「主人に取り入ることしか考えていない」などと囁きあっていた。
それを耳にしていた呂不韋は、ほとんど接点のない鮮乙に対し、
「そういう男なのだ」と悪感情を抱いていた。

しかし一緒に旅をしてみると、それは正しくないことがわかった。
寡黙はことばの貧弱さを表しているのはなく、逆に語るに足る人物が周りに居なかっただけであった。
鮮乙が語る言葉には真摯さがあり、志を感じられた。

悪意に満ちた家には沢山の家人が居たが、呂不韋は常に孤独であった。
しかし野に出、苦難を共に旅した時、たった一人の鮮乙がその孤独を癒した。

人に囲まれていても、孤独を感じる時がある。
孤独とは、人の多寡ではなく、身近な理解者が居るか否かに起因する。
我々は誰かの孤独を癒しているだろうか?

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