【宮城谷昌光 奇貨居くべし】計謀というのは大いなる誠実から発しないかぎり、けっして真の成功を得られない

こういういつわりのないありかたが、人を打つのであり、
計謀というのは大いなる誠実から発しないかぎり、けっして真の成功を得られない


呂不韋が奇貨として擁立した公子異人(子楚)。
呂不韋配下の申欠をもって「愚人」と評される異人であるが、
愚人ではあっても、悪人ではないというのが呂不韋の評価であった。

また呂不韋は、偽善を行わないことを異人の美点として挙げた。
子として父母の安寧を祈ること、このことが自身の安寧を招くことを教えられた異人は、
毎日、父・安国君、母・夏姫の康福祈り、また義母である華陽夫人を敬慕するすることを誓った。
愚直な異人は、人の目がないところでも毎日祈るであろうと呂不韋はみた。

呂不韋が異人を嫡子の座につかせる、という行為はまさしく計謀と言えるところである。
なんの取り柄もなく、人質として預けられた国でただ朽ちるのを待っていた異人を、
現太子にではなく、その夫人に売り込むため、まず夫人の姉に取り入るという、
およそ凡人には思いつかぬ計謀によって嫡子とさせた。

確かにその計謀は卓抜な呂不韋の発想力、行動力によって成ったものであるが、
異人が悪人ではなかったこともまた、この成功に不可欠な要素であっただろう。

「計謀」と書くと、そこには「ずる賢い」「人を騙す行為」というニュアンスが生じるが、
異人の大いなる誠実がその側面を和らげ、「誠意を持って真っ直ぐに謀を巡らす」という
なんとも矛盾に満ちた行為を成立させてしまった感がある。

「嘘も方便」という言葉もある。
「誠心誠意嘘をつく」、そんな政治家も居た。
良い嘘も有る、と言って良いかはわからないが、
少なくとも必要な嘘というモノは有るだろうし、その嘘は誠意と一緒に使われるべきモノであると思う。

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