【宮城谷昌光 奇貨居くべし】おのれの性質に適わぬ者を黜け、あるいは避けつづけていては、いつまでたっても人としての度量はひろがらない

おのれの性質に適わぬ者を黜け、あるいは避けつづけていては、いつまでたっても人としての度量はひろがらない


張苙という男は、他人の感情の所在を察するような情懐が無く、相手を常に威圧すような態度の男である。
肚のすわりぐあいから、相当の悪人か、あるいは少なくない死地を踏んできた者、と呂不韋は見た。

斉軍が慈光苑に迫ってから苑に入ってきた男たちの頭と思われる人物である。
姿を表した時、炬火も持たず苑内をうろついていたため、呂不韋は伯紲の生命を狙う刺客ではないか、と疑った。
しかし呂不韋は刺客では無いと判断した。
自己が露わであり過ぎる。
刺客であれば、まずは自らの怪しさを消すことから始めるであろう。
張苙は性質に不用心がありすぎる。

孟嘗君に遇い、その人柄を知った呂不韋は、張苙のような癖のある男に対する構えを自得した。
張苙が悍馬であるとするなら、それを慣らしてみたい、とまで思うようになった。
悍馬とは暴れ馬のことである。
孟嘗君に倣い、彼のような玄妙な居住まいで面白みを感じながら人に接してみたい欲望に駆られた。

後に張苙は陀方の配下であり、呂不韋の要請に応え遣られた者であったことがわかる。
張苙の任務は慈光苑の首脳と苑の民を出来るだけ避難させ、陶の邑に導くことであった。
呂不韋の判断は正しかった。

人は誰しも、苦手な相手があるものだ。
その相手を避け、遠ざけることは簡単であるが、それは自己を変えるのではなく他人を変える行為であり、
自身の成長にはなんの益もない。
結局、適わぬ者とは生涯適わぬのかも知れないが、適うように努力する過程で得るものが必ず有るだろう。

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